検証事例:創造力を支えるテクノロジー – コトブキヤのクリエイティブとZOTAC ZBOX edge MA762 / 株式会社 壽屋

モノづくりの最前線 – コトブキヤとデジタル造形の未来

1953年に小さな玩具店としてスタートした壽屋(コトブキヤ)は、今やフィギュア・プラモデル業界のリーディングカンパニーとして、国内外のファンを魅了し続けています。『フレームアームズ』『メガミデバイス』といったオリジナルシリーズのほか、映画やゲームキャラクターのフィギュア化でも高い評価を受け、その造形技術の精巧さは世界的にも認められています。

そんなホビーの制作現場では、デジタル造形技術の導入が進んでおり、デジタルツールの進化によって、かつては手作業で行われていたフィギュアやプラモデルの原型制作も、今やZBrushやCADソフトを活用しながら3Dプリンターで形状を出力するのが主流になりつつあります。コトブキヤは率先して技術導入を進めてきました。そして、この分野の最前線で活躍するのがコトブキヤの原型師たちです。

本記事では、彼らの作業工程や技術的なこだわり、デジタル化による変化、そして最新のプラモデル「ウィルバーナイン」の制作秘話を交えながら、造形の未来を探ります。

デジタル造形が進化する中で、それを支えるのが高性能な作業環境です。そこで今回、ZOTACのコンパクトPC 「ZBOX edge MA762」 を導入し、ZBrushを使用するデジタル造形の現場でどのようなパフォーマンスを発揮するのか、コトブキヤの原型師たちとともにテストを行いました。

原型師の得意分野と分業の重要性

話を伺ったのは、ウィルバーナインの製品化に携わった、コトブキヤ企画本部開発グループ第二原型チームのチームマネージャー・白髭さんと、CADを用いたパーツ分割や可動設計を担当するエキスパート・西丸さんです。
コトブキヤの原型師チームは、フィギュア担当が10名、プラモデル担当が10名ほどの規模で、それぞれの分野に特化した造形技術を持つメンバーが在籍しています。

「最初のころはリバースエンジニアリング的なアプローチでしたね」と白髭さんは振り返ります。かつてフィギュアがメインだったコトブキヤが、プラモデル事業部を立ち上げた当初、組み立てプラモデルのノウハウが不足していました。そのため、「当時はまだフィギュア造形のノウハウを応用しながら、中国の工場と協力して原型と呼ばれる手加工で作り上げた立体造形物をベースにパーツ分割や可動設計を施し、プラモデルとして成立させる試みを行っていました。この頃はまだフィギュアとプラモデルのベースが同じだったんです」と西丸さんは語ります。

CADを用いたパーツ分割や可動設計を担当:西丸さん(右)

しかし、現在ではフィギュアとプラモデルの設計プロセスは大きく異なっている。

白髭さんは「フィギュアは基本的に固定ポーズで、形状の自由度が高いのが特徴です。一方、プラモデルは可動や組み立てが前提なので、パーツ分割や強度の考慮が必要になります。」と語る。

特に、今回の「ウィルバーナイン」はプラモデルとして設計されており、組み立てる楽しさと可動性の両立が求められた。「フィギュアのようなディテールを維持しつつ、パーツ分割や関節の強度も考慮する必要があります。細部のこだわりと組み立てやすさのバランスを取ることが不可欠です。」

フィギュア原型師にはそれぞれ得意分野があります。例えば、メカ、人体(美少女)、怪獣ものなど、扱う対象によって専門性が異なります。

「メカ系の造形は細かいパーツが多く、関節や構造を意識する必要があります。逆に美少女フィギュアは、顔のバランスや髪の流れ、布の質感をどう表現するかがポイントです。怪獣フィギュアの場合は、スケール感やディテールの作り込みが求められます。」と白髭さんは語ります。

「フィギュアとは異なり、プラモデルでは外観デザインと内部構造の設計を別々の担当者が手がけることもあります。特に可動ギミックを仕込む場合、設計担当とのすり合わせが欠かせません。」と西丸さんは説明します。

特に最新作『ウィルバーナイン』 の制作では、デザインが確定してから実際の原型作業に至るまで、多くの試行錯誤があったそうです。

「最初にデザインを見たとき、非常にシャープなシルエットが印象的でした。もともと外部デザイナー・駒都えーじさんが基となるイラストをデザインし、それを原型製作者に渡してからのブラッシュアップ作業がスタートしました。ただ、プラモデル化するにあたり、このシャープさを維持しつつも、強度や組み立てやすさを考慮する必要がありました。」と白髭さんは振り返ります。

ウィルバーナインのメカ部分以外の調整を担当:白髭さん(左)

特に頭部のバランス調整には苦労したそうです。「顔の印象がプラモデル全体の魅力を左右するため、何度も試作を重ねました。少しでも比率が狂うと違和感が生まれてしまうので、3Dデータ上で細かく調整しながら試作を進めました。

また、ウィルバーナインは組み立て後の完成度を高めるために、できる限り合わせ目が目立たないように設計しています。可動範囲の確保とともに、自然なシルエットを維持するために細部の調整が必要でした」と白髭さんは語ります。

さらに、ウィルバーナインはコトブキヤの自社IPであり、設計上の自由度が非常に高かったそうです。「自社IPではデザインの自由度があるため、フィギュア的な造形の要素をプラモデルに落とし込むことができました。そのため、今回の設計では、ディテールや造形のこだわりを最大限活かすことができたのが大きな利点でした。」

デジタル造形のメリットとして、試作のスピードアップやディテールの調整のしやすさが挙げられます。一方で「イラストをそのまま立体化すると違和感が生じるため、フィギュアとしてのバランスを取るのが難しい」といった課題もあるそうです。

現場ではすぐの確認ができるよう業務用3Dプリンタが24時間休むことなく稼働している

 

ZBOX edge MA762のパフォーマンス – クリエイターの視点から

高精細な造形データを扱うためには、強力なコンピューティングパワーが求められます。特に、ZBrushやCADソフトで作業する際、ポリゴン数が膨大になるため、処理能力が不足すると動作が遅延し、作業効率が大きく低下します。

今回の導入テストでは、コトブキヤのデジタル造形環境にZOTAC ZBOX edge MA762を投入し、原型師の松本さんにその性能の検証をお願いしました。

まずは、ZBOX edge MA762がどのようにデジタル造形をサポートするのか、今回使用した製品のスペックと共に見ていきましょう。

  • プロセッサ:AMD Ryzen™ 7 7840HS(8コア/16スレッド、最大1GHz)
  • グラフィックス:統合型 AMD Radeon™ 780M – ZBrushで5000万ポリゴン以上のデータを快適に扱える性能
  • メモリ:32GB DDR5 SO-DIMM – 複数のアプリケーションを並行して動作可能
  • ストレージ:2 NVMe PCIe 4.0 x4 SSD 1TB×1  – 大容量の3Dモデルファイルを高速に読み込み、スムーズに保存
  • OS:Windows 11 Pro
  • ディスプレイ出力:HDMI 2.1、DisplayPort 1.4、USB4(最大4画面出力対応)
  • 接続端子:USB 4.0 ×1(フロント)、USB 3.2 ×3(フロント & リア)

ZBOX edge MA762

ZOTAC ZBOX edge MA762

AMD Ryzen™搭載のコンパクトなベアボーンPC。省スペース設計で高いパフォーマンスを実現。

公式HPで詳細を確認する

 

 

これらのスペックに加えて本体サイズはわずか15cm四方で厚みも2.5cm程度と非常にコンパクトな設計になっています。

原型師の作業環境では、ペンタブレットや3Dプリンターなど多くの機材がデスク上に配置されるため、コンパクトなPCのメリットは非常に大きいといえます。

「まず驚いたのは、ZBrushで5000万ポリゴン以上のデータを扱ってもスムーズに作業できたことですね。普段のデスクトップ環境と変わらず作業ができたのは大きなポイントです。」と松本さんは評価します。

また、ZBOX edge MA762のコンパクトな筐体は、作業スペースの確保にも貢献。「原型制作ではデスクの上にモニターやペンタブレット、3Dプリンタの出力物などを置くため、PCの設置面積が小さいのは助かります」と述べています。

さらに、長時間の作業でも安定したパフォーマンスを維持できる冷却性能も高い評価を得ました。

これらの評価から、ZBOX edge MA762 は十分な性能を発揮していることが確認できました。

長時間の作業でも安定したパフォーマンスを維持できる冷却性能は高く評価されました。一方で、コンパクトな設計ゆえに動作音や長期間使用した際のシステムの安定性に関する懸念も挙がりました。

「作業環境によってはそこまで気にならないかもしれませんが、今回は短期間のテストだったので、もっと長期間使って詳しく検証してみたいですね。」と松本さんは語りました。
(※ 今回検証したモデルは先行量産の試作機であり、実際の製品と同等の性能を持ちますが、一部採用部材が異なる可能性があります。)

思い思いのスペースを作って原型師の方々が作業されている。デスク上のスペースは非常に貴重だ

デジタル造形の未来とZBOXの可能性

フィギュア造形の世界は、今後ますますデジタル化が進むと予想されます。デジタル造形の未来を見据えると、クリエイターに求められる作業環境も進化していく必要があります。その中で、クリエイターたちが求めるのは、高い処理能力と安定性を兼ね備えた作業環境です。

「デジタルツールが進化しても、最終的に求められるのは ‘魅力的な造形’ です。そのためには、手作業の感覚や美的感覚を研ぎ澄ますことが不可欠。これからも新しい技術を取り入れながら、より良い商品を作っていきたいですね。」

今回のテストを通じて、ZOTAC ZBOX edge MA762は、コトブキヤのようなプロフェッショナルなクリエイターの現場でも十分に活用できるポテンシャルを持っていることが確認されました。

3D作業で高いパフォーマンスを発揮した ZBOX edge MA762 は、2Dデザインを中心とする作業環境でも有力な選択肢となります。特に、2025年登場予定のコトブキヤの新サービス 「自在視点マンガ素材集-ZIZAITEN-」(ジザイテン) では、すでに動作テストが行われており、2Dデザインの下書きや衣服の複雑なしわの様子の確認など、多岐にわたる作業に活用できることが期待されています。

まとめ

コトブキヤの原型師たちの手によって生み出されるプラモデルやフィギュアは、多くのファンを魅了し続けています。そして、そのクリエイティブを支えるデジタル技術とハードウェア環境の進化が、より高品質な造形を可能にしています。

ZOTAC ZBOX edge MA762は、コンパクトながらもハイパフォーマンスなPCとして、デジタル造形の現場でその実力を発揮しました。これからもZOTACは、クリエイターの創造力を支えるためのソリューションを提供し続けます。

そして、コトブキヤ最新作『フレームアームズ・ガール ウィルバーナイン』は現在予約受付中です。2025年5月の発売が予定されており、その精巧な造形をぜひ手に取って確かめてください。

デジタルとアナログが融合するフィギュア造形の未来も、さらに進化を続けます。コトブキヤの挑戦も、これから先へと広がっていきます。

今回ご説明いただいた白髭さん、西丸さんが携わったフレームアームズ・ガール ウィルバーナインは初回数量限定で追加髪パーツが付属。数量限定のため、興味を持った方はぜひ事前予約を!
(画像をクリックすると販売ページに遷移します)

ZBOX edge MA762 法人向け販売について

現在、ZBOX edge MA762は法人のお客様を対象にお問い合わせを受付中です。
貴社のニーズに合わせてZBOX edge MA762をはじめとしたビジネス向けの高性能コンパクトPCをご提案いたします。

▶ 法人のお問い合わせはこちら

 

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