はじめに
このたび、ZOTAC ZBOX MAGNUS ONE EU275070Cが発売されました。このミニPC、珍しいことに5GbEポートを標準搭載しています。5GbEがあればNASとの高速通信ができる——ということで、「NASの速度検証企画をやろう」と思い立ちました。
そこでシーゲイトさんにお声がけしたところ、なんとIronWolf Pro 32TBを4台お借りできることに。
ちょっとした計測のつもりが、128TBもの容量を手に入れてしまいました。RAID 5で冗長性を確保しても実効87.3TB。途方もない大容量です。
ここでふと考えたんです。
和尚はいま41歳。1日1〜1.5時間ほどゲームを楽しんでいます。
「もしかして、これ和尚の人生(ゲームライフ)が全部録画できるんじゃね?」って…。
というわけで今回は、「87TBで一生分のゲーム録画ができるのか」そして「その大容量データを5GbE環境で快適に扱えるのか」を検証してみました。
目 次
検証環境:87.3TBのNASを構築
NAS本体:UGREEN NASync DXP4800 Plus
今回使用したNASは、2025年に日本市場へ本格参入したUGREENのNASです。Intel第12世代Pentium Gold 8505(5コア/6スレッド)を搭載し、DDR5 8GBメモリを標準装備。今回の検証ではメモリをDDR5 16GB×2の32GBに増設して使用しています。
特筆すべきは10GbE + 2.5GbEのデュアルネットワークポートを備えている点。今回の検証では、10GbEポートがマルチギガビット対応のため、5GbE対応スイッチとのリンクが可能でした。
主なスペック
- CPU:Intel Pentium Gold 8505(5コア/6スレッド)
- メモリ:DDR5 8GB(最大64GBまで拡張可能)
- ドライブベイ:4ベイ(SATA)+ M.2 SSD×2
- ネットワーク:10GbE×1、2.5GbE×1
- 消費電力:約42W(アクセス時)/ 約18W(休止時)
HDD:Seagate IronWolf Pro 32TB × 4本
ストレージには、コンシューマ向け市場で最大級となるSeagate IronWolf Pro 32TBを4台使用しました。NAS向けに設計されたこのHDDは、7200RPM、最大285MB/sの転送速度を誇ります。
📦 提供機材の紹介
Seagate IronWolf Pro 32TB
今回の検証では、日本シーゲイト株式会社よりIronWolf Pro 32TBを4台お借りしました。製品の仕様・保証・サービス内容はメーカー公式情報をご参照ください。
仕様(メーカー公表値):32TB / 7200RPM / 最大285MB/s / ワークロード耐性550TB/年 / MTBF 250万時間
保証・サービス(メーカー公表):5年間製品保証 + Rescue Data Recovery Services 3年間付帯(条件・対象は公式参照)
32TB×4本=128TBの総容量を、RAID 5で構成。実効容量はメーカー表記で約96TB、Windows表示では約87.3TBとなります。
87.3TBがどのくらいの容量かというと、1枚3MBの写真なら約2,900万枚保存できる計算です。4K動画(1時間あたり約20GB)でも4,300時間以上。
では、和尚のゲームライフを全録画するとどうなるか?
1日1.25時間 × 365日 = 年間約456時間のゲームプレイ。これを録画し続けると…
| 録画画質 | 1時間あたり | 87.3TBで録画可能 | 何年分? | 何歳まで? |
|---|---|---|---|---|
| 1080p 60fps | 約5GB | 約17,460時間 | 約38年 | 79歳 |
| 1440p 60fps | 約10GB | 約8,730時間 | 約19年 | 60歳 |
| 4K 60fps | 約20GB | 約4,365時間 | 約9.5年 | 50歳 |
1080pなら79歳まで、1440pでも60歳まで録画できる計算です。なかなか夢のある数字ですね。
ただし、これだけの大容量データを扱うには、転送速度が重要になってきます。いくら容量があっても、データの出し入れに時間がかかりすぎては実用的ではありません。
検証PC:ZOTAC ZBOX MAGNUSシリーズ
NASへの接続には、以下の2台のミニPCを使用しました。いずれもデスクトップ版GeForce RTX 50シリーズを搭載しながら、驚くほどコンパクトな筐体を実現したモデルです。
ZOTAC ZBOX MAGNUS ONE EU275070C

デスクトップ版GeForce RTX 5070を搭載する世界最小クラスのミニPC。デスクトップ向けCPUも採用しており、性能を極限まで小さくしたい人に最適なモデルです。
- ネットワーク:5GbE×1 + 1GbE×1
- GPU:デスクトップ版RTX 5070搭載
- 今回のメイン検証機
- 製品ページ
ZOTAC ZBOX MAGNUS EN275060TC

デスクトップ版GeForce RTX 5060 Tiを搭載する世界最小クラスのミニPC。新たに壁掛け用のマウンターを採用し、設置の自由度が大幅に向上。個人用途から法人用途まで幅広く対応できます。
- ネットワーク:2.5GbE×2
- GPU:デスクトップ版RTX 5060 Ti搭載
- 比較用として使用
- 製品ページ
実際にNASと並べてみると、そのコンパクトさがよくわかります。


デスクトップ版RTX 50シリーズを搭載しながら、4ベイNAS本体より小さい筐体サイズ。省スペースと高性能を両立した検証環境です。
ユーザーの声:求められる転送速度
検証に先立ち、Xで簡単なアンケートを実施しました。「ファイル転送時にどの程度の速度が最低ほしいか」という質問に対して、289票の回答をいただきました。
<和尚のストレージ質問-②>
一般の方から逸般の方まで、お使いのパソコン環境のストレージ運用について教えてください。Q:ファイル転送時にどの程度の速度は最低出てほしい?
*速度はイメージです。
よければ用途や自分の環境などあればリプで教えてね٩( ‘ω’ )و— ZOTAC日本 (@ZOTAC_JAPAN) December 10, 2025
結果を見ると、約88%のユーザーが200MB/s以上を求めていました。USBメモリや外付けHDDの速度では物足りないと感じている方が大半のようです。
では、NAS経由で200MB/s、あるいは500MB/sを実現するには何が必要なのでしょうか。
ボトルネックを理解する:なぜ1GbEでは足りないのか
ネットワーク経由のストレージを考える際、速度を決める要素は主に3つあります。
- ネットワーク帯域(1GbE / 2.5GbE / 5GbE / 10GbE)
- ストレージ自体の速度(HDD / SSD)
- プロトコルのオーバーヘッド(SMB、NFS等)
一般的な1GbEの場合、理論上の最大転送速度は125MB/s。しかし実際にはプロトコルのオーバーヘッドがあるため、実効速度は100〜115MB/s程度が限界です。
今回使用したIronWolf Pro 32TBは単体で最大285MB/sの性能を持ち、RAID 5構成では複数ドライブの並列読み出しでさらに高速化が期待できます。つまり、1GbEのネットワークがボトルネックになっているわけです。
では5GbEならどうか。理論値は625MB/s。HDDの速度を十分に活かせる帯域が確保できます。
ネットワーク機器の確認:見落としがちな落とし穴
5GbEや2.5GbEの速度を活かすには、PC・NAS間のネットワーク機器もマルチギガビット対応である必要があります。ここ、意外と見落としがちなポイントです。
- ルーターまたはスイッチングハブが2.5GbE以上に対応しているか確認
- 1GbE対応のハブを経由すると、そこがボトルネックになり1GbE止まりに
- LANケーブルはCat5e以上を推奨(Cat6なら安心)
せっかく5GbE対応のPCとNASを揃えても、間にあるハブが1GbEだと意味がありません。ネットワーク環境を見直す際は、経路全体をチェックしてみてください。
ベンチマーク結果:実ファイル転送テスト
最初に2種類の実ファイル転送テストを実施しました。CrystalDiskMarkのような合成ベンチマークも試していますが、まずは実際のファイルコピーに近いシナリオで検証してみます。
テスト内容
- Large File:100GB単一ファイル(大容量動画データなどを想定)
- Small Files:約12MBのJPG×2000枚=約23.44GB(写真データを想定)
Large File転送(100GB単一ファイル)
| 接続環境 | 平均速度 | MB/s換算 | 転送時間 | 1GbE比 |
|---|---|---|---|---|
| 5GbE | 2,236 Mbps | 約280 MB/s | 6分7秒 | +208% |
| 2.5GbE | 1,343 Mbps | 約168 MB/s | 10分19秒 | +85% |
| 1GbE | 725 Mbps | 約91 MB/s | 18分55秒 | 基準 |
| (参考)Local | 11,369 Mbps | 約1,421 MB/s | 1分12秒 | – |
5GbEで約280MB/sを記録しました。これは1GbEの約3倍の速度です。
100GBのファイルを転送する場合、1GbEでは約19分かかるところ、5GbEなら約6分で完了。13分もの時間短縮です。日常的に大容量ファイルを扱う方にとって、この差は非常に大きいでしょう。
2.5GbEでも約168MB/sと健闘しています。アンケートで「200MB/sはほしい」と回答した方(24.2%)のニーズにはほぼ応えられる速度です。
Small Files転送(約12MB JPG × 2000枚)
| 接続環境 | 平均速度 | 転送時間 | 1GbE比 |
|---|---|---|---|
| 5GbE | 1,551 Mbps | 2分36秒 | +130% |
| 2.5GbE | 1,473 Mbps | 2分12秒 | +119% |
| 1GbE | 672 Mbps | 4分53秒 | 基準 |
| (参考)Local | 12,793 Mbps | 15秒 | – |
写真のような小さいファイルを大量に転送するシナリオでも、5GbEは1GbEの約2.3倍の速度が出ています。
興味深いのは、2.5GbEが5GbEとほぼ同等の速度を出している点です。小さいファイルの大量転送では、ネットワーク帯域よりもプロトコルのオーバーヘッドやNAS側の処理能力がボトルネックになりやすいためと考えられます。
CrystalDiskMark結果
続いて、定番のストレージ向けベンチマークソフト、CrystalDiskMarkでも計測してみました。
シーケンシャル読み書き(SEQ1M Q8T1)
| 接続環境 | Read | Write |
|---|---|---|
| 5GbE | 583.92 MB/s | 454.29 MB/s |
| 2.5GbE | 292.10 MB/s | 276.22 MB/s |
| 1GbE | 116.68 MB/s | 116.59 MB/s |
5GbE環境では読み込み583MB/sを記録。これはSATA SSD並の速度です。CrystalDiskMarkはキュー深度を深く取るため、実ファイル転送より高い数値が出ていますが、5GbEの潜在能力を示す数字として参考になります。

5GbE

2.5GbE

1GbE
PCMark 10 Data Drive Benchmark
実使用シナリオに近いベンチマークとして、PCMark 10のData Drive Benchmarkも実施しました。
| 接続環境 | スコア | Bandwidth | 平均アクセス時間 |
|---|---|---|---|
| 5GbE | 472 | 71.39 MB/s | 336 µs |
| 2.5GbE | 474 | 72.31 MB/s | 337 µs |
| 1GbE | 264 | 40.49 MB/s | 606 µs |
実使用シナリオでは5GbEと2.5GbEがほぼ同等のスコアとなりました。一方、1GbEは約264点と、5GbE/2.5GbEの約56%のスコアに留まっています。
注目すべきは平均アクセス時間です。1GbEでは606µsかかっているのに対し、5GbE/2.5GbEでは約336µsとほぼ半分。ファイルを開く際の”サクサク感”に直結する指標なので、体感的な快適さにも差が出てきます。
余談:「SSDなら、もっと速いのでは?」

ここまでの結果を見て、こう思った方もいるかもしれません。
「HDDでこれだけ速いなら、SSDにすればもっと速くなるのでは?」
和尚も同じことを考えました。そこで、手持ちのSSDでNASを組んで試してみたのです。
SSD NAS構成
- Crucial BX500 4TB × 4本(RAID 5)
- 実効容量:約12TB
結果はこちらです。
Large File転送(100GB)- SSD vs HDD
| 接続環境 | HDD NAS | SSD NAS |
|---|---|---|
| 5GbE | 2,236 Mbps(280 MB/s) | 997 Mbps(125 MB/s) |
| 2.5GbE | 1,343 Mbps(168 MB/s) | 804 Mbps(100 MB/s) |
| 1GbE | 725 Mbps(91 MB/s) | 605 Mbps(76 MB/s) |
結果は意外にも、SSD NASの方が遅くなりました。
原因はSSDのキャッシュ切れです。BX500はDRAMキャッシュ非搭載のエントリーモデル。通常のPC用途では問題ありませんが、100GBもの連続書き込みが発生するNAS環境では、SLCキャッシュが枯渇して速度が大幅に低下してしまいました。
この結果から言えるのは、NAS用途でストレージを選ぶ際は、用途に適したモデルかどうか確認が必要ということ。価格だけで選ぶと痛い目を見る可能性があります。
今回の検証テーマはあくまでHDDなので、NAS向けSSDの最適解についてはまた機会があれば試してみたいと思います。
録画テストも試してみた
ついでに、HDD NASへの直接録画もテストしてみました。
テスト条件
- OBSで1080p 60fps録画
- 映像エンコーダ:NVENC H.264
- 録画品質:高品質、ファイルサイズ中
- 出力先:HDD NAS(5GbE接続)
結果:30分間の録画でドロップフレーム0。まったく問題ありませんでした。
ビットレートは8〜15Mbps(約1〜2MB/s)程度で、NASへの書き込みは余裕でした。ベンチマーク結果(5GbEで約280MB/s)を考えれば当然といえば当然ですが、実際に試して問題ないことを確認できたのは安心材料です。
NASを録画先として使う運用も、十分現実的と言えそうです。
結論:NASは”常用ストレージ”になれるのか
検証結果をまとめると、5GbE + HDD NASの組み合わせで、十分に常用ストレージとして使えると言えます。
100GBの大容量ファイルが約6分で転送でき、2000枚の写真も約2分半で完了。これなら「NASは遅い」という従来のイメージは覆せるのではないでしょうか。
各環境の評価
5GbE環境(MAGNUS ONE EU275070C)
- 大容量ファイル転送で約280MB/sを実現
- 100GB転送が約6分、1GbEの1/3の時間
- 動画編集素材やRAW写真、ゲーム録画など大容量ファイルを頻繁に扱う方に最適
- 「NASを常用ストレージにしたい」なら、この選択肢
2.5GbE環境(MAGNUS EN275060TC)
- 大容量ファイル転送で約168MB/s
- 小容量多量転送では5GbEとほぼ同等の性能(184MB/s)
- PCMark 10スコアも5GbEと同等
- 2.5GbE×2ポート搭載なので、NAS接続用とインターネット接続用を分けて運用可能
- 壁掛けマウンター対応で設置の自由度も高い
- コストを抑えつつ高速NAS環境を構築したい方に最適
1GbE環境
- 転送速度は約90MB/s前後
- 大容量ファイルの転送には時間がかかる
- バックアップ用途がメインなら、現状維持でも問題なし
買い替え・導入の判断基準
アンケートでは約88%のユーザーが「200MB/s以上ほしい」と回答していました。この基準で考えると、
- 5GbE:Large Fileで280MB/s → クリア
- 2.5GbE:Large Fileで168MB/s → 惜しい(Small Filesでは184MB/sでほぼクリア)
- 1GbE:Large Fileで91MB/s → 届かない
「200MB/sの壁」を超えるには、やはり5GbE環境が最も確実です。
おわりに:和尚のゲームライフ、あと何年戦える?
さて、最初の疑問に戻りましょう。
87.3TBで和尚の一生分のゲーム録画はできるのか?
計算上、1080p録画なら79歳まで、1440pでも60歳までいけそうです。
まずはそこまでゲームを楽しめるよう、これからもゲームをやっていきたいと思います。
とりあえず、あと20〜40年は戦える。頑張ってゲームを楽しんでいきます!
そして今回の検証で確認できたのは、5GbE環境があれば、この大容量データをストレスなく扱えるということ。ZOTAC ZBOX MAGNUS ONE EU275070Cの5GbEポートは、まさにこういった大容量ストレージ運用にピッタリでした。
昨今、クラウドストレージの規約変更やアカウント停止のリスクも話題になっていますが、自前のNASなら自分のデータは自分で管理できる安心感があります。
内蔵ストレージの容量に悩んでいる方、ゲーム録画や動画データの保存場所に困っている方は、ぜひ「高速ネットワーク+大容量NAS」という選択肢を検討してみてください。
検証機材
- PC1:ZOTAC ZBOX MAGNUS ONE EU275070C
- PC2:ZOTAC ZBOX MAGNUS EN275060TC
- NAS:UGREEN NASync DXP4800 Plus
- Switch:TP-Link DS108X
- HDD:Seagate IronWolf Pro 32TB × 4本
- SSD:Crucial BX500 4TB × 4本(SSD NAS検証時)
検証機材協力
- 日本シーゲイト株式会社(Seagate IronWolf Pro 32TB)
※本記事の計測結果は特定の環境下でのものであり、環境や個体差により結果は変動する可能性があります。録画テストについても、プレイするゲームの負荷や同時に起動するアプリケーションによって結果が異なる場合があります。















